アイドラー式レコードプレイヤー、アイドラー再生の限界

アイドラーを調べましたが、なかなか入手は難しく、継続使用を諦める人も
少なくないのでは・・。
EMTやガラード向けは一般向けに販売されていたので社外品でもよく見かけます。
しかし業務用(放送局向け)はニーズも少ないためか見かけません。
自作することを考えました。
ゴムを積層して近い形状を作ることまでは
さほど難しくないのですが
一番の問題は正円に削る、研磨する最終的な仕上げです。
これはしっかりしたボール盤は最低必要で、
出来れば旋盤が・・。
弾力性のあるゴムの研磨は、微細な凹みがあれば
凹みのある形状のまま削られていくので
なかなか平滑な円は出しにくいです。
ゴム加工の専門業の人はそれなりに技術や道具があるでしょうけど・・・。




DYIの店で販売しているさまざまな形状のゴムは
目がやや粗いですが きれいな円が作れると
まあまあ使えます。
研磨してルーペで見れば粒子が見えます。気泡もあります・・。
それらがワウフラッターの原因にもなります。
粒子や気泡が表面にありプーリーと接触すると音はブレます。
ゴムによっては研磨にも限界があります。

※拡大すると・・・・
写真左が復版アイドラー右がオリジナル。
ゴムは弾力性があり柔らかいので性質が粘土ににているところがあります。
成型する段階では流動性があり 
△型に流し込んで成型、
△状況では気泡が入り込みます。
△型から外した段階では見えません。
△オリジナルでは気泡が入っていません。
△オリジナルは研磨しても気泡や異物は出てきません。
△復刻版は研磨すると微細な間隙(気泡の痕)や異物が現れます。
・・・これがワウフラッターの原因になります。
▲陶芸家ですので体験的に分かるのですが
 轆轤で茶碗を作る時、粘土の中に微細(米粒の半分以下)な 
 石(砂粒),気泡が入っていると、それが表面近くにあれば
 粘土と砂粒の圧力差の違いを指先で感じます。
 すると形を崩そうという力が働きます。
もし、これが弾力性のあるゴム製アイドラーをプーリーに圧着させて
回転していると その硬度差は回転の滑らかさに影響を及ぼすでしょう。
想像するには難くありません。

だた拡大すればその違い、差は出てきますが
普通に音楽を聴いて楽しむ分には問題はありません。

※欲張って、もっと良くしようと研磨を掛けると
 異物や気泡痕が表面に現れるとまずいことになります。
 どこかでか妥協が必要です。
ま、これくらいはいいか・・・という境目が。

△ 復刻版に使うゴムを市販の天然ゴム板に比べて
 異物や気泡痕の少ない半透明のシリコンゴムを使えば
 もっと良くなるかも知れません。 あくまで想像ですが。

△ M氏製作の再生アイドラー完璧な復刻ではないですが  
  いまのところ音楽を聴くのには まったく問題はありません。
  参考まで・・・・
△ 天然ゴムで振動や衝撃を吸収する素材として考えると
  中に気泡痕の間隙があったほうがクッション性は高まると
  思いますので 
  何に使うゴムかで密度や精製の度合いは違いがあるでしょう。

△ クラシックでピアノソナタの静かな曲を聴く以外では
  この復刻アイドラーでは問題なくレコードが聴けます。
  ジャズで音のブレを探すなんて不可能です。
  

リムドライブ型プレイヤーのレストアについては私の友人からおもしろい話を聞きました。 彼もまたビンテージオーディオに関わっている人間なのですが彼の言う所によると、アメリカではこのような修理にたずさわる人間を社会的失格者とみなすそうです。 お金を儲け、お金をもつ事が社会的成功の証しである国で、お金にならない儲けにならない事にせっせと励む人間はその時点で社会から相手にされないそうです。 これにならえば国内の技術にたずさわる人間のほとんどは、社会的失格者という事になります。 しかし国内のビンテージオーディオにたずさわる人間は、アナログ機器を文化財として保持する気構えがなければアナログの未来は無いと思えます。 これからのアナログは正しい情報の開示と人と人とのつながりにより行われる事を望みます。
ガレージメーカーがオリジナルにまさる物を作るのは並大抵の事ではありません。彼らが試みた事をオリジナル開発者が試みなかったはずはありません。 プロフェッショナルの彼らが日夜、研究を行い長期の使用にも耐えている製品となっているわけで、ですからユーザーは正しい情報の認識を求められています


現在、国内のオーディオアナログマニアの間でのアイドラードライブタイプのレコードプレイヤーの人気は根づよく、SN比などが優秀なスペックを持つ新発売のDDモーターやベルトドライブ式が市場に出まわれっているのに、わざわざアイドラータイプを求める方がおられるのは,音にたいするこだわりの表れだと感じます。
しかし現状は、どうにもこうにもこんな事があってもいいのかと思うことが多いのです。
限りなくあやしい情報や品物が見受けられます。 ヴィンテージオーディオはあやしげな伝説で組み上げられた砂上の楼閣の如きであります。 ユーザーの方々もうすうす気付かれている事でしょう。 それに気付かないのは、それを行っている人たちだけかも知れません。 嘘がばれないためには嘘をつき続けるしか無いのです。
アイドラー型は発売からかなりの年月を経過しているため交換パーツのデッドストックをみつけるがむつかしく、かわりに代替品を使用しなければなりません。 しかしこの場合あくまでオリジナルに準じたものでなければ意味がないのです。 
改造型等と称して自社開発している部品を自画自賛して、オリジナルより数段良いとか、オリジナルのものはこれにくらべたらお話しにならない等々、あまり感心しない広告が多く、オリジナルの欠点をひきあいに出すのが常套手段なのです。 
いわくリムドライブなのでゴロがでる、モーターの振動が大きい、SN比がわるい等、リムドライブメカニズムから推し量ると、すぐにわかるおかしな理屈です。 一番に理屈の合わない事は、リムドライブのゴロがでるという現象です。はたして使用しているアイドラーは正常なオリジナル品であるか、きちんと調整クリーニングをなされているのか、又、リムドライブだからゴロは仕方ないなどです。
現在、マニア一番の人気と思われるEMT927(あくまで良品)などは、モーターゴロが出るでしょうか? 私のレストアしたダブルアイドラー型レコカットは、EMTよりもっと前のSP時代のきわめて原始的な機構をもったものですが、ゴロなどは聴覚上感知する事はできません。 自社開発した製品を売るためにオリジナルをけなす事は好ましくありません。 まずゴロが出ることなどは、当時の高級プレイヤーでは考えられず、アイドラーの不調以外の原因があるとしたら、ただきちんとした調整修理をしていないだけでしょう。 次にモーターの振動の大きさの問題ですが、モーターのレストア、特にスピンドルシャフトの研磨と調整、エージング等には根気と技術が必要です。 それぞれのモーターの性格をよく見極め、最良の状態までトライを繰り返す良心です。 いいかげんに組みあげられたものには、いいかげんな音しか出てきません。 そしてSN比、よくアイドラードライブ型はノイズ成分がハーモニクスと関係しており、音楽性をゆたかに再現すると言われています。 これはある意味では正しく、ある意味では間違っています。 SN比の面からみればノイズは無い方がいいですが、問題はそのノイズの性質なのです。 実にSN比の問題はプレイヤー本体だけでなくシャシー、キャビネットからの外乱ノイズとのかね合いがあり単純に表現出来ません。 SN比だけでは新発売される現行機のほうが断然優れているのは明らかです。小型のモーターで重いプラッターを回し大質量、かぎりなく振動しないキャビネットに据えられた新型プレーヤーです。 しかしこのように作られたプレイヤーがあまりにも静かで不自然なほどの静寂間を感じる事が多々あります。 
リムドライブ型を使用される方々はこの部分でリムドライブ型に人間的なあたたかさを求められるのだと思います。